そろそろ梅の季節でしょうか。
近くのお寺の紅白の梅がきれいなので、散歩に行ってみようかな。
今日は雨ですけど…。
これから段々と心地よい季節になっていくのに、先日から世間を騒がせているのは、川崎で起きた少年の殺人事件。
ことばにならないほど凄惨ですね…。
もう少し周りの大人が気づくことができなかったのでしょうか。残念でなりません。
この事件に絡んで、また「少年法を改正すべきだ!」「適用年齢を引き下げるべきだ!」という議論が盛り上がっていますね。
でも、この事件では、今の少年法で不都合な結論にはならない、と思うのです。
少年法では、成人と比べて少年が手続上保護されています。
また、18歳未満には死刑を課すことができない、と、少年に有利にできています。
しかし、法律家であればだれでも指摘するのが、重大な刑に該当する事件については「逆送」が原則となっていることです(少年法20条)。
「逆送(逆送致)」とは、少年事件を取り扱っている家庭裁判所が検察官に事件を引き継がせて、罪を犯した少年を、成人と同じように刑事裁判を行わせる手続です。
本件は、この手続を行うにふさわしい事件でしょう。
ですから、中1少年を殺害した少年たちは、成年と同じように刑事処罰を受けることになると思います。
(もっとも、関与の度合い低い少年たちは家庭裁判所の少年審判手続になるでしょうが…)。
また、たしかに18歳未満の少年には死刑を課すことができません(少年法51条)。
少年法改正論者は、この規定を改正せよ! と強く主張しています。
しかし、報道などによると、この事件では主犯格の少年は18歳のようです。
そして、平成24年に下された光市母子殺害事件では、犯行当時18歳1ヶ月だった被告人に死刑が言い渡されています。
ですから、前例を見ても、少年法の規定によって、成年犯罪者と罪を犯した少年とで極端な不均衡が出るとも思えません(死刑制度の是非はここでは論じません。)。
改正論者であっても、一般論として、少年に矯正の機会を与えたい、そのために少年審判手続きが必要だ、という少年審判制度のあり方に異議を唱える人は少ないと思います。
そして、数多くの少年事件が、自転車のひったくりなどの軽微な犯罪で、重大犯罪はむしろ減少傾向にあります。(平成25年中における少年の補導及び保護の概況:警察庁生活安全局少年課 )
【リンク切れ】www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hodouhogo_gaiyou_H25.pdf
そうなると、いくら川崎の中1殺害事件が凄惨であっても、特殊な事件法律家の目からすれば、「今の少年法で、問題あるの?」と、思ってしまうのです。
コンピュータがソフトウェアとハードウェアの2つの組み合わせで機能するように、法律にも法規定(ハード)と運用(ソフト)で初めて実効性が出てきます。
運用面でなんとかできるのに、ハードである法規定を変更せよと主張するのは、コンピュータの中にアプリケーションソフトをインストールすれば解決できる問題について、コンピュータそのものを買い替えるべき、という極端な議論に感じられます。
なお、「実名報道をすべき!」という議論にも抵抗があります。このネットワーク社会の中、「忘れてもらう権利」についても欧州で認められ始めているのに、そこまで少年の氏名を知りたいものでしょうか。
同じ「公表」というのであれば、むしろ、再犯を繰り返す性犯罪者の実名を登録し、公表することで再発を防止するシステムを構築するほうが先ではないでしょうか。